雑感のススメ

三浦大知を摂って生きている

三浦大知 Backwards 感想


三浦大知 (Daichi Miura) / Backwards -Music Video-

 

いや~久し振りに暴力を振るわれた。

音楽で横っ面を叩かれたのは久々です。最初大知だけかな~と思ったら、いつの間にかNao'ymtがリンチに参加してた…怖……

 

というわけで実に約2年3ヶ月ぶりの三浦大知×Nao'ymtですね。ここ最近のシングルは三浦大知×UTAに懐柔されてたんですけど、急にNaoさんの右ストレートをもろに喰らった感覚。

「強いダンス味」のする楽曲、ここ一年くらいCOLORLESSとかYoursをガムのように噛み続けてたんだけど、どうも「もっと味の濃いやつ欲しいな~」と思うようになっちゃって。三浦大知の作る精進料理こと「球体」とか、優しすぎる味わいの「Antelope」も美味しいけど、ここらでガツンと味の効いた曲が欲しいと。そこにやってきた聞く強炭酸水、Backwards。

 

 

なんというか、本気出し過ぎじゃないですかね、この曲。

 

80年代を思わせるシンセで幕を開けて意表を突くイントロ、背中からカットインするMV、ワクワクが止まらないダンサー6人体制でのコレオ、独特かつしっかり韻を踏んだ詞表現、振りのギアの入れ方がおかしいBメロ後半、緩急の鬼みたいなサビ、生で見たら泡吹いて倒れそうなブリッジ、これでもかというほどのラスサビフェイク、既視感のある匂わせアウトロ……

三浦大知、始まったな。20年前から始まってるけど。

 

 

個人的にこの曲で一番ヤバいのがBメロだと思っていて

回想は持て余す人生の格子 届かず手放す世界

まだ燃えさかる縁を残し 心が毛羽立つ気配

いや~、Nao'ymt節入ってるわ~~~。「格子」が歌詞に入ってる曲、そうそうない。

「球体」でご存じの通り、彼の描く世界は往々にして容易には理解できないものなんですけど、こういう時に英語字幕があると便利なんですねえ!(池上彰)

Reminiscing is just a life through cage stripes

can't reach, let go

Burn this cage, I wanna fly away right now

回想とは、籠の格子から覗いた世界でしかなく、手を伸ばしても届かない。

今こそその籠を焼き払い、羽を広げ飛び立つ時。

 

 

すげ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

歌ってることまさしく

I'm sick and tired of walking backwards

じゃん。

 これを韻も踏んで体言止めしてメロに乗せるって、何事?

 

 

しかもここの後半(「まだ燃えさかる~」)からダンスの振りのギアの入れ方が狂ってるのよ。サビの気合の入れ方だよ。

 かと思ったらサビはそこまで主張を激しくしてないから完全に魅せに来てる部分(「Because I felt like~」)がちゃんと立ってるし。急に手ピロピロし出すのに全然雰囲気壊してないし。カレーにチョコ入れるみたいなアクセントになってるし。そんなカレー食ったことないけど。「格子」とか「めでたし」でバカでも分かるシンプルな振り見せて余裕を見せつけてくるし。

 

Twitterでもすでに「これ本当に歌って踊るのかよ」みたいな声が上がってますが、マジで本当にやんの?という気持ちと絶対やるんだろうなあという気持ちが入り乱れてる。「I'm unstoppable」のとこで「ギャ~~!!!」って言いたいもん。

 

2021年、三浦大知が本気で進軍してくる……これは年末にはアルバムを期待しても…………

 

 

つーかシングル4曲もあんの?「ガチ」じゃん

 

( 記事書くの久し振り過ぎてよくわかんない文章になっちゃった)

 

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球体解釈 6.テレパシー

前曲↓

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君をめぐって、過去と現在が交錯する。

 

夕立が響く 鉄橋の下 

 かつて君と雨宿りをした、思い出の地を訪れる。

 

頬伝う雨粒 君はふざけて

指で拭いながら言う 「泣かないで」

夕立に濡れた頬を涙に見立てて、泣き虫な君が自分をふざけてからかう。そんな情景が、幻が男には見える(あるいは、本当に男は涙を流しているのか)。

 

小さく笑う僕に言う 「泣かないで」

君を思い出して涙を流すのに、君は「泣かないで」と言う。

 

視線をそらした先 紫陽花が呼ぶ雷

ふと我に返れば、雷鳴が聞こえる。

 

 

日常の 例えばこんな一瞬さえ

いつの日か きっと思い出すだろう

些細な出来事ですら、君との時間が今も思い出される。

 

飛び出した君が言う 「羽ばたいて」

いなくなってしまった君が呼ぶ声が聞こえる。

 

「あの雲を見下ろすまで、羽ばたいて」

雲の上の自分のもとへ会いに来てくれと、君(=月)が呼んでいる。

 

一陣の風が運ぶ 過ぎ去った夏の記憶

風が呼び起こした記憶は、鉄橋の下、君とふざけあった思い出か。

 

視線をそらした先 紫陽花が呼ぶ雷

 

 

遠くへ

ここではない、どこかへ

遠くへ

君に会いに、遠くへと。

 

 

 

響く雷鳴。ふと、よみがえる風景。

傘を捨て、男は雨の中に飛び出す。

 

空映す水たまり 川岸に咲く花火

君と見た花火

男は、思い出す。花火を見に来ていたことを。

 

 

いつの間にか 湿った風が運んだ張り紙

そこに描かれた 大きな飛行船

円環での「風待つ張り紙」に対応する。

次曲へのリーディングとなるフレーズ。

 

 

降りしきる雨の中、彼は飛行船に目を奪われ立ち尽くしていた。

 

球体解釈 5.淡水魚

 前曲↓

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濁った水底のような、くぐもった不穏なメロディが耳を這う。

 

 

君を映す水滴 空を覆う彗星

水滴に君の姿を見る。彗星は古来、不吉の象徴。

 

変わってしまったのは誰 探しているうちにやがて

しまいこんだ本音に 埃が積もる

変わりゆく君(あるいは自分)を直視できず、心の内を隠して続いた日々。

 

はがれ落ちた穢れ どこへ吸い込む排水口

「水滴」「排水口」から、風呂場での出来事か。水に流され、排水口へと消える不浄。

 

抑圧されるほど 色付く実は深い朱色

 傷口を抑えるほど、流血は止まらず、朱い実を結ぶ。

 

わずかな温もりだけ頼りに じっと待つ夜明け

 徐々に体温は低下し、それを感じることすらできなくなっていく。

 

ぼくらはまるで 大海を目指す淡水魚

淡水魚

 淡水魚は海に出れば、浸透圧により息絶える。それを、分かっていながらも。



水面に滴る音は、君の涙だろうか。

「私たちの個性が、ここに馴染めないだけ」

君の言葉が明かす、二人の苦しみの根源。それは、互いが変わってしまったからなのか。

 

夢をほどく 踏む茨

それとも遠く ふたりなら

共に描いていた夢を捨て、周囲との不和の痛みに耐えるか。

あるいは二人ならば、その先へ進めるか。

 

明日が君を 連れ去りそうで

あわてて手を取った

男は自らの限度を受け入れ諦めるようになった。変わってしまった。 

君は苦難の道に涙しながらも、茨を越えて明日へ向かおうとしていた。行きたい場所も見つからない彼と違って。君もまた、変わってしまった。

そんな君を引き止め、二匹の魚は大海を目指す。

 

 

はがれ落ちた穢れ どこへ吸い込む排水口

体に刻まれた傷から、皮膚が剥離し渦に吸い込まれていく。

 

抑圧されるほど 色付く実は深い朱色

同調圧力を受け、周囲の人々に抑圧されるほど、その身は傷つき、朱色の血が奔る。

 

わずかな温もりだけ頼りに じっと待つ夜明け

動けないままで寄り添った二人は、互いを認識するための意識すら薄れていく。ただただ、苦しみが、夜が明けるのを待つ。

 

ぼくらはまるで 大海を目指す淡水魚

ここには見つからない希望を求めて、「自死」という選択をもって大海を目指す二人。

 

淡水魚

メロディが崩壊し、歪み、繰り返す「淡水魚」のフレーズ。

大海の底に、沈んでゆく意識。

 

(独演にて)男は君の手を引き、必死に夜明けを目指す(空に浮かぶ器は月の意匠ともとれる)。だが気づけば、手を引く先に君はいなかった。君はもう、既に。

 

消え去るように止むアウトロのように事切れた君を、男は深く抱きしめる。

 

 

 

 

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球体解釈 4.閾

 前曲↓
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孤独な部屋から、場面は転換を迎える。

ベッドを押し込んだ後、男は半球状の器を持ち出す。そしてどこからか用意した水槽から、水を注ぐ。空へ静かに浮かび上がる器に少し躊躇いがちに硝子壜を入れ、曲は「淡水魚」へと移っていく――

 

 

端的に言えばインタールード的な役割の曲であり、独演でも場面転換(踏み込んで言うと時系列変化)に使われているが、インストゥルメンタルであるが故の難解さがある。

 

まず「閾」とは、簡単に言えば内外の区切りという意味の言葉。ここでは何の区切りなのか。恐らく次曲「淡水魚」(過去)への境となる、ということだろう(無論ただの推測)。鍵となるのは独演で上記のように注がれていた水。個人的にこれは球体の中でも解釈の難しさはかなりのものだと感じるが、「浴槽に水を溜める」ことの示唆ではないかと思う。また「綴化」での

器を満たす涙に浮かんだ

という歌詞の示すところだとも考えられる。詳しくは該当曲にて。

さらに、終盤では歌声のようなものが聴こえ、かすかに「君が笑った」と聞き取れる。これは「クレーター」での歌詞。主人公の、物語の原動力とも言うべきフレーズである。

 

 

 次曲「淡水魚」にて、君がいなくなった理由が明かされる。

 

 

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球体解釈 3.硝子壜

 前曲↓

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「序詞」と同じ部屋で、下弦の月夜に男が唄う。

 

晴れた日よりも雨の日が好きで

冷めたふりしていつも泣き虫で

思い出される、君のこと。

 

鉛色に染まる部屋の中で 君が置いていった硝子壜だけが

色を集めて光反射して ただひとつ 綺麗だった

君は、この部屋に硝子壜を一つ置いてどこかへ行ってしまった。この部屋で唯一の、君の思い出が輝いて見える。

 

 

「まぶしくて目を閉じている間に、

大事なものをもし見過ごしてしまったら嫌だから、

太陽より、私は月が好き」

 君が語っていた、月が好きな理由。眩しさで物事を見えにくくする陽光より、暗闇に光る月光を彼女は好んだ。

 

鉛色に染まる部屋の中で 君が置いていった硝子壜だけが

色を集めて光反射して ただひとつ 綺麗だった

 月を眺めれば、君を思い出す。月のように光を受けて輝く硝子壜が、綺麗で仕方ない。悲しいほどに。

 

 

悲しみがほどけない

巡りくる明日に もう君はいない

自ら「ほどこう」としても、この悲しみは「ほどけない」。どうすることもできない。

 

悲しみがほどけない

小さな硝子壜 もう花は咲かない

「腐敗した世界にも花は咲く」のに、君が残した硝子壜に、花は咲かない。

 

 

嗚呼

 

 部屋中の光を一身に浴び、硝子壜は輝けど、その花は、決して咲くことはない。

君は、もういないのだから。

 

 

 

時計の針のようなアウトロが、残酷に流れゆく時間と、何も変わらない現実を刻む。

また今日も男は、無力に、鉛色の部屋に独り残される。

 

 

 

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球体解釈 2.円環

 前曲↓
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フレーズが回り続けるかのように繰り返されるイントロ。

水滴の音で開いた曲に合わせ、白いシャツの男がマイクを持ち、少しの笑みを浮かべながら、円環の中心で踊る。

バックでは歌詞に対応した映像が次々と流れていく。

 

 

見慣れた街並み 風待つ張り紙

額の汗を払い なぜか砂の手触り

何故か、どこかで見たことがある、体験したことのあるような記憶が鮮明に浮かぶ。

(→転生前の記憶。テレパシーやクレーターなど参照)

 

咳払い

それらが何なのか、まだ分からない。いつか、どこかで経験があることしか。

 

ここで男は円環から徐々に離れていく。

 

すぐ後ろ迫る 黄昏が照らす

見覚えあるギアマン じわり滲む違和感

夕暮れが近づく。何かの終わりが、すぐそこに迫っている(転生の旅)。

夕日に浮かび上がる硝子。何かが、記憶に引っかかる。

 

男は円環から跳ぶようにして抜け出す。

 

並ぶ窓 泳ぐ雲 探してる共通項

交差点 どこかで

つかむ記憶の袋 覗けば鳴るプレリュード

幕開け どこかで

マンション、雲、交差点、鉄橋、謎の街、硝子の瓶、張り紙、花、二匹の魚、トンボ

様々な映像が、頭の中に押し寄せてくる。取り留めのないフラッシュバックに共通点はあるのか。必死に記憶を探る。

そして、男は何かを思い出した。

 

球体解釈 1.序詞

 

汽笛。

船の汽笛と、それに呼応するような波音から曲は幕を開ける。二つは混ざり合い、徐々に差し迫る。緊迫感を醸し出す音は、詞とともにプツリとやむ。

暗い部屋の隅に、一人佇む男。

 

思えばこれまでの人生 海原に浮かぶ一艘の船

身を粉にし得た対価で どうにか防ぐ波風

イントロと呼応する「一艘の船」という言葉を使い、主人公の苦難を表している。ここでいう船は、帆も張られていないようなオンボロだろう。必死になって、波風をしのぎ、日々を生き抜くのが精一杯な状況。これが人生を通してそうなのだから、主人公はひどく人生に悲観的である。

 

自由を求め 自由を恐れ いつかという幻の声

自らにないもの、自由への憧れと畏怖。決められた責務を果たし生きる日々から脱却したい、けれどそれが怖くもある。「いつか自由になれるのではないか」「いつか自由になってしまうのではないか」という相反する二つの感情。

 

行きたい場所が見つからない

帰りたい場所はあるのに

自由になったところで、行くあてもない。寄る辺とするところは確かにあるのに。

 

教えて 嗚呼  教えて 嗚呼

 自分は、どこに行くべきなのか。分からない。自ら答えを出せない。

 

 

いつのまに削られ 均されてしまった

疑わず限度を 受け入れてしまった

 同調圧力に削られ均され、自分の限界を知らぬ間に決めつけてしまった。自ら考え、己を信じることを、やめてしまった。

 

腐敗した世界にも 花は咲くと 握りしめた種

今さら蒔く場所などなく ただひとり立ち尽くす

希望を手にして、何かを変えることも出来なくなった。これが間違っていると分かっているのに。自分には出来ない、と限度を受け入れたのだ。

 

 

答えを求めうつむいた 視界の隅に見慣れた靴

顔上げたその先に 朝日を背にした君

ここで初めて、第二の存在「君」が示される。

 

―扉が開く。

朝日を背に帰ってきた「君」は沈んだ声で言う

「ただいま」

 

 

 

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