雑感のススメ

三浦大知を摂って生きている

球体解釈 5.淡水魚

 前曲↓

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濁った水底のような、くぐもった不穏なメロディが耳を這う。

 

 

君を映す水滴 空を覆う彗星

水滴に君の姿を見る。彗星は古来、不吉の象徴。

 

変わってしまったのは誰 探しているうちにやがて

しまいこんだ本音に 埃が積もる

変わりゆく君(あるいは自分)を直視できず、心の内を隠して続いた日々。

 

はがれ落ちた穢れ どこへ吸い込む排水口

「水滴」「排水口」から、風呂場での出来事か。水に流され、排水口へと消える不浄。

 

抑圧されるほど 色付く実は深い朱色

 傷口を抑えるほど、流血は止まらず、朱い実を結ぶ。

 

わずかな温もりだけ頼りに じっと待つ夜明け

 徐々に体温は低下し、それを感じることすらできなくなっていく。

 

ぼくらはまるで 大海を目指す淡水魚

淡水魚

 淡水魚は海に出れば、浸透圧により息絶える。それを、分かっていながらも。



水面に滴る音は、君の涙だろうか。

「私たちの個性が、ここに馴染めないだけ」

君の言葉が明かす、二人の苦しみの根源。それは、互いが変わってしまったからなのか。

 

夢をほどく 踏む茨

それとも遠く ふたりなら

共に描いていた夢を捨て、周囲との不和の痛みに耐えるか。

あるいは二人ならば、その先へ進めるか。

 

明日が君を 連れ去りそうで

あわてて手を取った

男は自らの限度を受け入れ諦めるようになった。変わってしまった。 

君は苦難の道に涙しながらも、茨を越えて明日へ向かおうとしていた。行きたい場所も見つからない彼と違って。君もまた、変わってしまった。

そんな君を引き止め、二匹の魚は大海を目指す。

 

 

はがれ落ちた穢れ どこへ吸い込む排水口

体に刻まれた傷から、皮膚が剥離し渦に吸い込まれていく。

 

抑圧されるほど 色付く実は深い朱色

同調圧力を受け、周囲の人々に抑圧されるほど、その身は傷つき、朱色の血が奔る。

 

わずかな温もりだけ頼りに じっと待つ夜明け

動けないままで寄り添った二人は、互いを認識するための意識すら薄れていく。ただただ、苦しみが、夜が明けるのを待つ。

 

ぼくらはまるで 大海を目指す淡水魚

ここには見つからない希望を求めて、「自死」という選択をもって大海を目指す二人。

 

淡水魚

メロディが崩壊し、歪み、繰り返す「淡水魚」のフレーズ。

大海の底に、沈んでゆく意識。

 

(独演にて)男は君の手を引き、必死に夜明けを目指す(空に浮かぶ器は月の意匠ともとれる)。だが気づけば、手を引く先に君はいなかった。君はもう、既に。

 

消え去るように止むアウトロのように事切れた君を、男は深く抱きしめる。

 

 

 

 

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